焙煎機historyRODANのこと

1991・夏 土鍋焙煎スタート
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□ 焙煎量 ・・・・・100g □ 焙煎時間・・・・約30分 □ 材料・・・土鍋、200℃の温度計 □ 制作費・・・¥1000(温度計) *土鍋は自宅にあったものを使用< |
真夏だと言うのに部屋を閉めきりコンロに向かうこと約30分。 その間10秒ごとに土鍋をふり、焼きあがる前にはずっと振りつづけて焙煎。 焙煎後はザルに移して扇風機で冷却をしていました。(この扇風機はお見せできないほどボロボロ・・・) この土鍋焙煎機の弱点は、中の豆の様子が観察できないこと。ときどきふたを開けて中の様子を見ていたのですが(今思うとこれがダメでした) ふたを開けたときの熱風がすごくて、まつげが焼けそうになることもしばしば・・。もちろん土鍋を持つ手も熱くなるので、溶接用の皮の手袋を使っていました。 この焙煎で今でも謎なのが、中の温度が170℃で、1回目のハゼが起きることです。(今は、200℃なのですが)でもこれが理想なのでは・・と思っています。これが、RODANの焙煎の原点なのだ。 |
1991・冬 手あみ焙煎スタート
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□ 焙煎量 ・・・・・200g~300g □ 焙煎時間・・・・約20分 □ 材料・・・ステンレスのザル (20cm)×2個 モップの柄1本 □ 制作費・・・¥0 (すべて自宅にあったもの) |
コンロの前でこの手あみ焙煎機を振りつづけて焙煎していました。冷却は、以前と同じ扇風機。 豆の観察をしながら焙煎できるぞ!と思い手網にしたのですが、チャフが飛び散ることまでは考えていませんでした。 このチャフがものすごく、掃除がたいへんでした。 また、時々、火に近づけすぎて豆に火がつき、手あみが火の玉になることもしばしば・・。その上、柄が短かったので手が熱くて熱くて、火傷をしそうで危険でした。 以前、ほうろくで美味しいコーヒーが焼けると本で読んだことがあったので、ほうろくでも試してみましたが、 私には、丸い手あみのほうがBESTだと思い、一度にたくさん焼けるようにと、40cmのステンレスザルで、もう一回り大きい手あみ焙煎機も作ってみました。 今度は、手を火傷しないようにと柄も長めに。これで1Kgの生豆が焙煎できるぞ(すこし楽ができるぞ)と思ったのですが、これが大きな間違いでした。 焙煎機+生豆1Kgはとても重く、20分間振りつづけることのたいへんさときたら・・。また、柄が長すぎて扱いにくく、狭い場所であちこちにぶつけ、グラスを割ったりとたいへんでした。やっぱり、小さい焙煎機で、少量ずつ、こまめに焼いていくのが良いのだと思い知らされました。 このころ、運命の人”従二さん”と出会い、私のやっていることは間違いではないのだと自信を持ち、RODANのめざす味が見えてきました。 |
手あみと並行で カリタ手回し焙煎機
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□ 焙煎量 ・・・・・100g □ 焙煎時間・・・・約20分 □ 材料・制作費・・よく覚えていないのですが、ん万円(?) 今思うと高い買い物をした |
食器屋で初めて見つけたときの感動ときたら、とても言葉では言い表せません。 こんなすばらしいものがあるなんて!これで、手あみから解放されると喜びました。しかし・・わたしは、無知でした。 卓上コンロに穴をあけ、焙煎機を分解し、ボルトでしめて固定して焙煎を試みましたが失敗。アルミ箔をまいてみたりもしましたが・・。納得のいくものが焼けず、すぐあきらめてしまいました。 *あとで知ったのですが、これは、飾りの置物として売られていたそうです。 |
1993・春 1Kg釜手回し焙煎機
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□ 焙煎量 ・・・・・300g~800g □ 焙煎時間・・・・16分~17分 □ 材料・・1kg釜手回し焙煎機 (富士珈琲機械製作所より購入) ブリキ、風呂釜のコンロ □ 制作費・・・・・・¥10000 (手回し焙煎機代) 風呂釜コンロ、ブリキは従二さんが、どこかで拾ったものらしい |
1Kg釜手回し焙煎機を購入し、コーヒー豆を焼き始めたのですがどうも納得のいくものが焼けない。 その頃は、「こんな立派なものなのだから、完璧なものが焼ける」と思い込んでいたので(完璧なんてあるはずがないのですが)、 「火が悪いのだ」と思い込み、魚を焼くセラミックの網をコンロの上に置いて遠赤外線の効果を利用したり、 石を釜の中にいれて豆といっしょに焼いたりもした。 遠赤外線はたしかに効果があるのですが、従二さん曰く 「炭火でもうまく焼けるが、ガスでも炭火と同じように上手に焼けるよ。」 そうです。サンマが、炭で焼くからタイになるわけがなく、ブラジルサントスが、炭で焼くからモカに変わるわけでなく (炭焼珈琲が炭の味がする、これがいいのだなんてバカげた話もありますが)要するに、それを使いこなす技術が大切であると気づきました。 このとき、以前知人の棟梁が話していたことを思い出しました。墨壷で墨をうつ(線を引くこと)のにも、初めての人には、うてないそうです。とても単純で、一見簡単そうに見えるのですが、ここでもやはり技術。職人技が必要なのだそうです。 そこから焙煎機の改良が始まりました。 丸一日かけて、釜にドリルで穴を開け、腰は痛いし、手はビリビリするしでたいへんでした。 改良、改良で焙煎機も3台目になり、ようやく納得のいく味が見え始め、もっと美味しいものを、ということで、 従二さんと相談し、この形になりました。 この焙煎機は、ほとんど従二さんの手作りです。(氏は、とても手先が器用なのです) この形で、約4年間焙煎していましたが、この間に、お客様にもご支持いただけるようになり、ほんとうに感謝しています。長く使った焙煎機ですし、珈琲のことをいろいろ教えてくれたのもこの焙煎機でした。愛着たっぷりの焙煎機です。 この焙煎機で焙煎するようになってから、以前の店の玄関/踊り場で焙煎をしていたのですが、当時は喫茶も営業中だったので、来店されたお客様は、けむりと暑さの中、階段を上がってきていました。この場所はとても日当たりが良く、夏には、50℃にもなるくらいのところですので、お客様にはかなりご迷惑をかけたと思います。 |
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冷却機。1Kg釜手回し焙煎機で焙煎をするようになってから作りました。 これは、作業用の扇風機で、造船所などで使っているものです。 知り合いの造船所のオーナーに譲っていただいたのですが、すごい音とともに、吸引力も凄まじく、市販の冷却機の数倍の効果があると思います。 ごみを入れるポリ容器にかごをのせて、ここで冷却します。いろいろ考えいい材料はないかと探し回った結果、このポリ容器がぴったりでした。 |
1996・冬 10Kg釜手回し焙煎機
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□ 焙煎量 ・・・1.6Kg~10Kg □ 焙煎時間・・・・16分~17分 □ 材料・・・・2mmの鉄板 特注バーナー 特注手回しかご (↑友人が製作) □ 制作費・・・¥45000 (↑バーナーが高かったかな) |
1kg釜で20回~30回焙煎する日が続き、体力の限界を感じ、10kg釜を製作する決心をしました。この頃になると、作ることにも慣れてきて鉄板を切る作業も何とかこなし、あとは、組み立てるだけ。楽勝!と思いきや、それがとてもたいへんでした。 一番大変だったのがふたのところの丸い形。 金槌でたたいてもびくともせず、最後には、軽四トラックで鉄板に乗り少しずつカーブを作っていきました。 また、溶接も初めてのことなので、あちらこちらが穴だらけになってしまいました。手回しかごは、友人に作ってもらったのですが、こちらも安請け合いをしてしまったと思ったそうです。 この焙煎機がなんとも重い。使ううちに慣れてきましたが、はじめて1年ほどは、筋肉痛とも肩こりとも腰痛ともいえぬ激痛に悩まされました。おかげさまで、スポーツジムに通うことなく筋肉が付き、一石二鳥です。 この焙煎機最大の弱点は、なんと言っても熱です。鉄板で覆われているので全体が熱くなり、まるで火の玉を抱えているようです。夏などはあまりの暑さに室温計を見るのが怖いくらいです。 その中で4回続けて焙煎すると、汗がピタッと出なくなります。今でこそ水分補給をしますが、最初は、なぜ汗が出なくなったのか解らないまま焙煎を続け、目がかすみ、ぼぉーとなっていました。また、煙が多く、防護マスクをして焙煎するのですが、それでも息苦しい。部屋中が煙だらけで、燻製になりそうです。 この焙煎機で焙煎をはじめてから一番怖かった体験は、豆に火がついたこと。以前の焙煎機でも何度か経験はしているのですが、これは、怖かった。 5KGの豆に火が付いたのです。手あみが火の玉になり、どうしたらよいのか分からず、とにかく外へ出さなくてはと思い、火の玉となった手あみを持って外へ出ました。外へ出てからもしばらくはその火をただ眺めることしかできず、はっと気が付き、あわてて水をかけて火を消すことができました。 人間はパニックになると頭の中が真っ白になるんだなと、思い知らされました。店が無事でほんとによかった・・。 |
2002年・夏 10kg釜電動手作り焙煎機
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□ 焙煎量 ・・・1.6Kg~10Kg □ 焙煎時間・・・・16分~17分 □ 材料・・・・2mmの鉄板 特注バーナー 特注手回しかご (↑友人が製作) □ 制作費・・・¥250000 (鉄工所を経営する友人に作ってもらいました) |
10キロ手回し焙煎機で、ゴリゴリと焙煎をはじめてから、ありがたいことに、たくさんの方にコーヒーをお届けできるようになりました。 本当にうれしいことです。 毎日、ご注文いただいたコーヒーを焙煎していると、ある日突然腰に激痛が!?これが初の”ぎっくり腰”体験でした。それから腰痛との戦いの日々で、焙煎機を回すことも儘ならない。。このままでは焙煎を続けることも難しくなる・・。 このことがきっかけとなって、今まで手で回していた焙煎機を、電動にすることに。 手で回していたときに少しでも近づけるよう、回す速度の調節もできるようにお願いしました。 前回の10キロ手回し焙煎機の手回しかごを作ってくれた友人に、サイズはすべてそのままに、手回しの部分のみ電動になるようにお願いして作ってもらいました。 出来上がった焙煎機を見て感動! 焙煎機のふたの部分の曲線の、美しいこと! そして、溶接部分には、穴などまったくなく(←あたりまえですが・・)さすが職人さん! 新しい焙煎機でのコーヒー作りがはじまりました。 手回しを電動にしただけだから、今までと同じようにコーヒーも焼けるはず、と思っていました。 でも実際は、かなかなうまくいきません。。 焙煎時間を変えてみたり、火力を変えてみたり。思いつく、あらゆることを試してみましたがダメ。「味が変わった」とお客さまからお叱りを受けることもありました。 なぜ違うのか、どこが違うのか。試行錯誤の毎日。 悩んで壁にぶち当たり、乗り越えたかと思えばまた大きな壁。 「いつも同じ味のコーヒーを作る」ことの難しさを痛感していた、そんな毎日でした。 それでもお客様は、待っていてくれる。 壁にぶち当たったときには、不思議と誰かから助けの手が差し伸べられる。 そのことに感謝をしながら、またそのことを励みに焙煎。これを続けていくことが今は大事なのだ。 この数年は、焙煎もずいぶんと落ち着いてきたように思います(・・が、いかがでしょう?)。この釜の得意とするところも体に刻み込めた気がしています。 |